《MUMEI》
拒絶
「何か、いつもと違いませんか? 何かありましたか?
私で良かったら、話聞きますけど…
あ、お腹空きません? 購買でパン買ってきたんですけど、食べます?」


(最悪…)


奈都は緊張すると饒舌になるタイプらしく、いつも以上に早口で話しかけてきた。


しかも


その口調は、本気で心配しているというより


好奇心丸出しで、不快なものだった。


機嫌をとるような、こびるような笑顔と態度も俺をますますいらつかせた。


「…」


俺は何も言わずに奈都に背を向けた。


(早く出ていけ)


怒鳴りたい気持ちを抑え、態度で示した。


「え、でも…」


奈都が近付く気配がして


その手が、俺に触れようとした。


その瞬間


俺の中の、也祐の優しい感触が、汚されるような気がした。


今日は、誰にも触れられたく無かった。


だから


「触るな!!」

「キャッ!」


俺は奈都の手を勢いよく振り払い、屋上を後にした。


(やっぱり学校なんて来なければ良かった)


激しく後悔しながら、そのままアパートに帰った。


その後、俺はやっとゆっくりと穏やかに也祐の事を考えてる事ができた。

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