貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
河野透  3
 大口を開けて寝ていたのか、喉が妙に酷く渇いている。ようやく俺は額を伝う生温かい汗に気付いた。身体全体が汗でびっしょりと濡れている。他に失態なんぞはないかと思い、近くにあった温度計に目をやった。…気温39.7度。この季節にしてこの気温は…ありかなとぼやいてみる。と、クスクスと笑い声がした。とても儚く、とても弱弱しい柔らかい声。
 俺は今一度、家中を確認した。家族は皆、外出中だ。空耳かな?と呟きつ、リビングに引き返す。あまりにも暑いので、冷蔵庫を開け、心地好い冷風にあやかり数秒、お茶を取り出して戸を閉める。と、元の暑さが戻る。ぁ…あぢぃと独り言を吐いた時だった。
「私にも」その声は、先刻に聴いた儚く、弱弱しく、柔らかい声。

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