《MUMEI》

「珠美〜〜!!」

「佳緒?」

珠美が体育館裏に向かって歩いていると、佳緒が駆け寄ってきた。

「なにしてんの、こんなところで?」

「さっき部活終わって帰るとこだったの。それで珠美が見えたから。」

「そっかぁ、大変だねぇ〜部活!!」

「ていうか、あんたこそ何しに行こうとしてるのよ?」

佳緒の問いに珠美は言葉が詰まった。

「それは・・・」

「何よ?」

「っまた今度!!」

珠美は逃げるが勝ちと言わんばかりに、佳緒から猛スピードで駆け出した。

ごめんね、佳緒!!

その時。

「ちょっとあんた!!何すんのよ!!!」

「いいから大人しくしろ!!」

珠美はさっきいた場所を見ると、佳緒が見知らぬ男に後ろから取り押さえられていた。

「佳緒!!!」

珠美は佳緒の元へ駆け出そうとした。

その為、後ろにいた影に気がつかなかった。

「お前も大人しくしろ」

パッと後ろから口を塞がれた。

珠美は声を出そうとしても、口を大きく角張った手で押さえられていた為叶わなかった。

何・・・何なの?

「今から行き先を変更しろ。【体育館裏】から、なぁ」

男の目尻がニヤッと下がる。

どうして知ってるの・・・?
誰にも言ってないのに・・・!!

男はスッと珠美の口からてを離した。

「はは!!どうしてって顔だなぁ!!頼まれたんだよ、久我に!!」

そんな・・・私達がやろうとしていることを知ってるの?
とにかく邦光君達に知らせなきゃ!!

珠美がサッと携帯を取り出すと、男が制止をかけた。

「おおっと。ソレ使ったら、あの可愛いお友達がどうなるかわかんないぜ?」

男はニヤリと笑った。

そうだ・・・佳緒!!
佳緒は助けなきゃ!!

「わかった、言う通りにするから。佳緒は離して!!」

「あぁそのつもりだよ。じゃあ行こうか?彼氏の所へ♪」

佳緒を捕まえていた男は、佳緒を解放した。

「珠美!!!」

「大丈夫だよ、佳緒。自分のことだもん。誰かに頼っちゃいけないんだ」

邦光君たちには悪いけど、佳緒を巻き込むわけにはいかないもん。

珠美は男に両脇を挟まれて、人がいない暗い道を歩いていった。

「ど、どうしよう・・・珠美が!!」

佳緒はどうしようもなく途方に暮れた。

しかし急に、ある人物が浮かび上がった。

そうだ・・・あいつなら、なんとかしてくれるかも・・・。

佳緒は携帯を取り出し、電話帳の一番上にある名前を押した。

プルルルル、と冷たい機械音が鳴る。

出てくれないかもしれない。
でもあいつしか頼れるのはいない・・・。
お願い、出て・・・。

長く冷たい音が鳴り続ける。

プツッ。

電話の向こうと繋がった。

その瞬間佳緒は、相手が何かを喋る前に捲くし立てた。

「お願い!!珠美を助けて!!!」

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