《MUMEI》

あの夜…



笠松は、猪俣の女……直美を殺した…。



もし兼松の疑念が誠ならば、目の前に居る芸妓は、猪俣の義妹ということになる。



笠松という偽名を使った男は……いま〆華の目の前にいる兼松と同一人物だ。



つまり、万が一にも自分が〆華の姉を殺した事を気付かれてしまえば、その瞬間から猪俣に通じる道が開け、命を狙われる羽目になる…。



(…儂がその女を殺したことを…


…気付いているのか…?


否…気づいている筈が無い。)



兼松の全身から冷たい汗が滲み出し、心の鼓動は身体ごと揺らすように激しく打っていた。

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