《MUMEI》

久しぶりに帰った実家は、思い出より小さかった。
都会から少し離れているせいか、蝉の声が大きく聞こえる。

「暑いわね。」

縁側で風に当たっていると、妻が団扇を持ってきた。
「こっちは、東京より涼しいと思ってたのに。」
「同じだろ。翔太は?」
「近所の子と、遊びに行ったわよ。」

今年小学校にあがった息子は、こちらに来てから忙しい。
子どもに、暑さなど関係ないのだろうか?

「お父さん!」

噂をすれば、日焼けした翔太が走ってくる。
誇らしげに笑い、手に何かをかかげて。

「見て!凜くんが、取ってくれたんだ!!」

開かれた手に、握られていたのは。
妻が、小さく声をあげる。

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