《MUMEI》 一つ曲がった先電車を降りて、乙矢に手を引かれた。 彼の完全なる独壇場だ。 「乙矢……乙矢どこに行くの。」 「どうする?昔の俺なら誰も俺達を知らない世界に行きたかったな。」 「なんだそりゃ。」 「アイノコクハク。」 「冗談!」 何故片言なんだろう。 「冗談でも俺は……愛してるよ?」 均整のとれた顔が零す微笑に不覚にも照れてしまう。 こんな素敵な乙矢を俺が見たと知れたら世の女子から嫉妬されるんじゃなかろうか……なんて思わせる破壊力だった。 「……俺も……あ、あいして……」 上手く返してやろうとしたけど愛してるなんて台詞はそう簡単に出てこない。 情けないくらいに吃った。 「ふ……二郎にはまだ早かったかな?」 ひどい、子供扱いした。 「意地悪。」 そういう言葉を使うから子供扱いされるのかな、と脳裏を過ぎる。 「分かってるじゃないか。」 うわ、悪そうな顔して……。 「そんなんばっかしてると嫌われるさー……」 「あ、そうゆうのは全く大丈夫だから。」 「もー、どっからそんな余裕が……。」 「だって、二郎は俺を見限らないだろう?」 そうだけどさ……乙矢の自信に満ち溢れた笑みを見たら発する言葉が見つからない。 「狡いなあ。こんなこと女の子にしたら勘違いしちゃうよ?」 「……いいよ本気にして。」 なんて、眩しいキメ台詞。 「あはは、なんか照れー」 この人、生まれながらにタラシだからな……俺が気になった女の子は大体乙矢のことが好きだった。 「それは口説いてるから。」 「……ンン?」 くどい? 「そう。俺は異性間と同じように二郎が好きだよ。」 乙矢の言葉は現実味が欠けていて、夢うつつにでも意識が漂っているみたいだ。 「……へぇ」 気の抜けた声が出てしまう。こんな時、なんて言えばいいんだ。 「と言うことで、行ってみようか?」 強引に手を引かれる。 「何処に!」 とりあえず、質問をしてみた。 「……学校?」 乙矢の行動パターンは読めない…… 前へ |次へ |
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