《MUMEI》

銃声が響いてきた。
ユウゴが視線を戻すとフロントガラスに細かな亀裂が入った。
反射的にユウゴは体を前に倒し、ダッシュボードに手をつく。
しかし車はスピードを落とすどころかさらに増して道を塞いでいた車両へと突っ込んで行った。
激しい揺れと何かが当たる音が耳に響く。
シートベルトなどしていなかったユウゴは両足に力を入れ、舌を噛まないように歯を食いしばってその揺れに堪えた。
数秒後、何かを引きずるような音がした直後、揺れがおさまった。
ユウゴはそっと顔を上げてみる。
前方には行く手を遮る物は何もない。
後ろを振り向くと、遠く離れた場所に無惨に蹴散らされた数台の車両と人間が転がっていた。
「いやー、すごかったな、今の。さすが織田だぜ」
言いながら後部座席に横になっていたらしいケンイチがムクリと起き上がった。
運転席では織田が「怪我はしてないか」と落ち着いた口調で聞いてくる。

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