《MUMEI》
再会
「こんな所で居眠りか・・」
あきれたような声が聞こえた・・そんな気がした。
「ん・・・?」
すっと眼を開け周りをぼんやりと眺める。自分は足を崩して座っていて、膝には式夜。空には雲一つ無く、僅かに欠けた月が一つ。式夜の寝顔を見ているうちに、何かに寄りかかって眠っていたのだろうと自己分析する。
「ハンドの声が・・気のせいかな?」
「我ならここに居るが?」
小さいが良く通る声がすぐ横で聞こえた。
「うぇ!?」
半ば寝ていた意識がハッキリとする。こんな所に寄りかかって眠れる物は無い。だとすると・・
おずおずと自分が寄りかかっていた物を見る。
漆黒のローブ。そして薄い紫色の髪。僅かに紅く見える左眼。
「ハンド・・だよね?」
一応確認を取る彩詩。
「我は、我でしか無い。」
短く返答し、やれやれと小さくため息をつくハンディング。
しばらく驚いた表情をしていた彩詩だが嬉しそうに笑いをこぼす。
「帰って来たんだ。お帰り。」
式夜の髪を梳きながら会話を始める。
「・・帰る場所など無い。」
淡々と言葉を返すが小さく、ただいまと呟く。
「うん。」
小さく笑いながらハンディングの顔を見る。照れた様に視線を逸らすハンディング。
「何かあったの?こんな時間に尋ねて来るなんて・・」
表情を少し引き締め、ハンディングに問う。
小さく頷くと彩詩へと視線を向ける。
「・・確証は無い、だが・・少し気になる事があってな。」
そう言いながら魔法を発動させていく。「コーンオブサイレント」そう呼ばれている魔法。外部からの音の侵入を遮断し、内部の音が外部へと漏れないようにするための魔法。
辺りが静まり返った。聞こえるのは式夜の寝息だけ・・
「随分と真面目な話みたいだね。」
眼を細め、ハンディングを見る。
「先ほど、墓地にヒトが居てな。」
「墓地って・・守護騎士専用の?」
頷き話を続ける。
「そうだ。その者が随分と危険なことを口にしていたのでな・・あの男を殺すと、墓前で誓っていた。」
小さく頷きながらもどこか判断に困っている様子の彩詩。
「確かに危険なことだけど、でも・・そのくらいなら・・」
確かに、と頷き返すハンディング。
「あぁ。普段なら気にもしないが・・その者が言葉をかけていた墓が・・その、ロア・アーキルスの物であったものでな。後は・・我の勘のようなものだ。」
言い難そうにロアの名を口にするハンディング。その名を聞き、顔を背ける彩詩。
「そっか・・」
悲しげに言葉が紡がれる。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫