《MUMEI》
「着いたぞ」
「ここ・・・裏庭?」
珠美が男達に連れてこられたのは、久我との思い出が詰まった裏庭だった。
「突然場所変えて悪かったな、珠美」
「久我君!!」
声がする方を振り向くと、久我の周りには5〜6人の男達がいた。
「ほら、もっと近寄れよ!!」
珠美はドンッと男に久我達の方へ押された。
「どういうことなの!?」
珠美の言葉に久我は口元を緩めた。
「オレ達2人の時間邪魔されたくなかったからさ〜、ここにしちゃったんだよね!!」
怖い。
なんか久我君いつもと違う・・・。
いつもと違う笑みを浮かべる久我を見て、珠美は恐怖感を覚えた。
「こーんなに珠美のこと思ってんのに疑われちゃったからさ、すっげー傷ついてんだよね〜オレ!!だからぁ・・・」
久我はじりじりと珠美に近づく。
「な・・・何・・・?」
「珠美にもちょーっと傷ついてもらおうかなぁって思ってね!!」
ど、どうしよう・・・。
誰か来て・・・!!!
「やれ」
久我の冷たい声が暗く寒い裏庭に響く。
珠美は男に両手を押さえられる。
「・・・・っ!!」
声が出ない。
どうしよう・・・助けて!!!
「へぇ〜!!前見た時よりすんげー可愛くなってんじゃん♪」
もう1人の男はニヤニヤ笑いながら珠美に近づく。
もう・・・駄目!!!
珠美が覚悟を決め、目を硬く瞑ったその時。
バキッッ!!!
「ぐぇっ!!」
珠美の両手を掴んでいた男が、変なうめき声をあげて倒れこんだ。
だ・・・誰?
珠美はゆっくりと目を開く。
「大丈夫か!!マミ!?」
「邦光君!!!」
明良は珠美の肩を抱き、座らせる。
「なんだお前!!!」
男達が明良の背中を目掛けて飛び掛ってくる。
「あぶない!!!」
珠美の声と同時に明良は振り向き、飛んでくる攻撃を受け流した。
明良は格闘技全国制覇のだけあって、男達を次々と倒していった。
すっごいんだ・・・邦光君って・・・。
珠美がボーっと明良を見ていると、ぐいっと胸倉を持ち上げられた。
「うぎゃっ!!」
「マミ!!!」
明良が珠美の所へ飛び出そうとしたが、一足遅かった。
「はっ!!お前こんな男ともつるんでたのかよ!?オレを怒らせてどういうつもりだ?」
久我の目は珠美の目を捉えてギラギラとさせていた。
「何とか言・・・っ」
バチーンッッ!!!
久我が最後まで言い終わらないうちに、何かが爆発したかのような音が響き渡った。
それは珠美の手が、久我の頬を地面に叩きつけるかのように打った音だった。
「ふざけないでよ!!!あんたよりこっちの方が怒ってるに決まってるでしょ!!なんであんたが怒ってるのよ!!意味わかんない!!あたしならまだしも、佳緒や邦光君に手を出すなんて最低っっ!!!」
はぁはぁ、と息をつく珠美を見て、久我と明良はポカーンとしていた。
「あはははは!!!お前最高っ!!!」
我に返った明良は、珠美の肩をバシバシと叩いて爆笑した。
「こっちはそれどころじゃなかったんだからね!!」
まだ笑いつづける明良に向かって珠美は喚いた。
明良はスッと真顔になり、久我を見下ろした。
「お前、覚悟できてんだろうな?」
「何のことかわかんねぇなぁ」
久我は明良のから顔を背ける。
「まだシラをきるつもりなの〜?」
「なんやお前、ホンマ最低な奴やな」
「いい加減にしなよ」
「千晴子ちゃん、秋塚君、春日君!!!」
3人は珠美の前にずらっと並んだ。
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