《MUMEI》

「──ごっそーさん」





先に席を立ったのは、

鳳君だった。





「‥これ、流し置いとくぞ」

「ハイ、ど‥ども‥」





鳳君は必ず、

空になった食器をシンクに置いといてくれる。





何となくやってるだけ、

って言い張るけど──

何気に気遣ってくれてるみたい。





「──昨日、寝たのかちゃんと」

「ぇ、ハイ‥、ぉ‥お陰様で‥」

「‥ふーん‥」





良かった、

とも──

ならいい、

とも言わなかった。





でも、

鳳君──

内心では喜んでるんじゃないかな──

なんて、

私は思うんだよね。

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