《MUMEI》
光を目指して
そこにいたのは高下とその仲間たち。
当然だ。
彼らに囲まれ、殺されかけていたのだから。

しかし、

「あれって、誰か生きてる人いる?」
「……いや〜、これは」
おそらく全滅だろう。

それほどひどい状態だった。

ある者は顔が潰れ、ある者は上半身しかない。
その周りには飛び散った内臓や人間の部位が転がっている。

「…うっ」
後ろでユキナが何かを吐き出した。
「……平気か?」
ユウゴは吐き気を堪えながら振り返った。
「平気に、見える?」
「見えない。けど、あそこ通らないと、脱出できそうにない」

ユウゴが顎で指した先には、散乱した人間の部位。
さらにその先に、僅かに明かりが見える。
「……マジ?」
「他に道があるなら教えてくれ」
ユキナは周りをじっくり調べてから、深くため息をついた。
「……ないね」
「だろ?」
ユウゴも同じようにため息をつき、そして決意したように顔を上げた。
「よし、行くぞ」
「……うん」

力無い返事を背に、ユウゴは思いきり息を吸い込んだ。
そして四つん這いになって、前へと進み出す。
後ろを見ると、口をギュッと引き締めたユキナが続いていた。

 二人は狭く、血の臭いが充満した空間をできるだけ急いで進んだ。

手と膝に血が絡み付くのがわかる。

あと少し、あと少し

自分に言い聞かせながら、ユウゴは進む。

できるだけ周りを見ず、先にある光だけを目指して。

「……気持ち悪」
呟くユキナの声が苦しそうだ。
「我慢しろ。あとちょいだ。なるべく息止めとけよ。余計に気持ち悪くなるぜ」
「……ん」

光が近づいてきた。

ようやく出られる

そう思った時、ふと横に目を向けてしまった。
「……おわっ!」

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