《MUMEI》

雹里は顔を上げた女性の顔を優しく両手で包んだ。


「ありがとう」


雹里は微笑みながら言った瞬間、体がふわりと浮いた。


顔を上げてみるとユリウスが険しい顔をして雹里を脇に抱えていた。


「ユリウス?」


ユリウスは何も答えず、店にいる雹里の音楽を聞きに来てくれたくれた人を睨みつけた。


店の中にいた人たちは、ビクンとし入り口を開けた。


ユリウスは雹里を脇に抱えながら歩き出した。

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