《MUMEI》

高校からそのまま選考で上がれる女子だけの聖霊学園。友達に興味のなかった私に、美羽は頼みもしないのに嬉しそうに付きまとっている。
 一方的に向こうから話しかけて来ただけ。気が合った訳でもなく、ただ色々都合がよかっただけで一緒にいるようなもの。体験したことや感じたことをとりあえず口に出すタイプの女の子だから、フンフンとあいづちを打っておけば勝手に満足してしまう。コンビニで買い物をするように手に入れて、いらなくなったらさようなら。特別な感情もいらなくて、携帯の中と学校でだけ友達ごっこをすればいい。美羽が自慢な巻き髪に、茶髪の登校スタイルは最近の流行りで、学校側も黙認してるといったとこかな。丸い瞳は輝きにいつも満ちている。私とはまったく逆なタイプ。きっと未来は自分の手にあると信じきっているのだろう。あっちにこっちに友達がいっぱいなのに特別な用事もないのに調子よく付いてくる。
 がらくたな日々も、たまには懐かしいと思える日が来るかもしれない。

「ねえールナ?」

 ふと美羽の視線がバックに集中した。

「かわいいソレ、どこで買ったの?」

 どうやら瞳の輝きの矛先はこのラメの黒兎、編み人形のようだ。ブランドしか持たないと思ったのにちょっとだけ驚いたけど。

「ああ、これーどこで拾ったのか覚えてないけど…」

 あまりに欲しそうな顔だったから、失礼かなと思ったけど、

「上げるよ」

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