《MUMEI》
琥珀
陽のあたらない陰な世界にぼくは暮らしていた。幼い頃あんなに幸せだった思い出はもうどこにも無い。
 母の運転する車で久し振りのドライブ、家族みんなで実家に向かう途中。慣れない母親の運転での居眠りで大事故。かろうじて軽傷のぼくとは違い弟は寝たきりの入院生活を強いられてしまった。生死を彷徨う弟のケガに泣きわめく母親。父はすべて

「おまえのせいだ!」

と母親を攻め続け実家に戻り、そして一方的に離婚届けを送りつけてきた。そう、ぼくは母と同じに捨てられたのだ。
 それからは酷いものだった。二度と復活出来ない状態で入院してる弟を見舞いながら、唯一残された僕だけでも立派に育てようと口だけうるさくがなり立てる母親。ちょうど反抗期もあってぼくはキレまくってしまった。
家庭内暴力。父と遊んだ楽しい思い出になるハズだった金属のバットで家中を壊しまくった。ただ、目の前にあるすべてをバラバラにしてしまいたかった。そして揚げ句の果ては無気力、引き篭り。
 そして自分の育て方を責めては泣き、すべて見てミヌ振りするようになってしまった母親。何事も起こらなかったと生き方を全否定し、狂った様に趣味を見つけては手当たり次第没頭する。家に居るときは、まるで僕は存在しないかの如く振る舞う。

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