《MUMEI》

いつの頃からか、ぼくはまるで一軒家に一人住まいの状況が当たり前の生活になっていた。自分の部屋は今風のブラインドに囲まれた二階の隅。残り物の食事を取りに下の台所に降りたり、お気に入りのピザとコーラのセットを頼んで玄関先に出て受け取ったりすることはあるけど、それ以外はたまに来る訪問販売はシカト。誰か知り合いが来ることもないし、朝早く弟のお見舞いや趣味やらで出掛けたままになっている母親と顔を合わせることもなくなっていた。

「涼鳴家は崩壊かあー」

 別に悲しむわけでもなく、琥珀は独り言のクセが付いていた。

 高校に通っていた僕は途中から完全にルートを外れてしまった。気が付いたら退学。当たり前だよね、だって途中から通学してないんだから。親だって、ぼくがこわくて聞けないよね。学校、どうするの?なんてー

 ぼく自身、元々思い切りの悪さは持ってたけど。優柔不断に思われる態度もとってたみたいで、たまに仲間に指摘されたり。世間や世の中の人を信じない性格は急に変わるハズもナイのだから。
 家族の崩壊以来、小さい頃から付いてまわってきた、うっとうしい!とはねのけながらも弟だけには唯一、優しく接することが出来てた。真っ直ぐな瞳は、ぼくと違って、ひたすら信じ切ってる純粋さを秘めている。そんな弟を、ばかだなー

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