《MUMEI》

「何なんだよお前ら!!証拠も無いくせに決め付けてんじゃねーよ!!」

頬に紅葉型がくっきりと残っている久我は、私達に喚き散らした。

「証拠ならあるけど〜っ!!」

「都槻ちゃん!!」

いつの間にか現れていた都槻は、モバイルを開き久我に見せた。

「な、何だこれ・・・」

そこには都槻のプロ顔負けである情報網を駆使して集めたとされる、写真が何枚も載せてあった。

それらはどれも、久我が数人の女の子と付き合っている写真、その女の子を集団で虐めている写真であった。

「あとはこんなのとかね〜!!」

都槻がポンッとキーを押すと、女の子の声が流れた。

『あたし、急に久我君に付き合おうって言われたんです。
そのときはもう、うれしくって・・・。
でも、いつからか女の人たちと会っているのを見てしまったんです。
それを久我君に問い詰めたら、放課後話そうって言われました。
でも・・・放課後そこに行った私が見たのは、久我君だけではなく、大勢の女の人達でした。
呆然とする私は、その女の人たちに集団で虐められたんです。
その時の肉体、精神的な恐怖感は、今も忘れられません。
こんなことをされたのは、私だけじゃなくて、他の久我君に付き合おうって言われた子は皆そうみたいなんです・・・。
お願いします、もうこんなことが起こらないようにして下さい!!』

そこで音声はプツッと途切れた。

「どうっ?この声、聞き覚えあるよね〜!?
被害にあった女の子の1人、【鈴島莉香】ちゃんだよっ!!」

「あいつが喋るわけな・・・!!」

久我はハッとしたように、自分の口を手で覆った。

「そう!!今莉香ちゃんは喋ることが出来ないんだよっ!!あんたが指示した虐めのせいでね!!」

「ちなみにこの莉香ちゃんの声は私がやったんだよ〜!!『まんまと引っかかってくれたね?』」

千晴子は、声をさっきの女の子に変えて見せた。

「そ・・・そんな・・・!!お前ら何者なんだよ!!!」

「そんなん、お前なんかに教えてやる義理はないで。オレらは、お前が傷つけようとしたあやっぺのただのお友達やしな」

「あんたは知らなくてもいい」

「そういうこと。オレらはただマミを助ける為に来たわけ」

良次、湊汰、明良は久我の前に立ち、見下ろした。

「ちなみにあたし達にこんなことされた〜!!って誰かに喋ったら、あんたの悪事全部キレイさっぱりながしてやるんだからねっ。あたしが【クラッシャー】って呼ばれることぐらいは知ってるでしょ?」

「ツヅちゃん、本気でやるから逆らわない方が良いよ〜」

都槻、千晴子も久我の前に立つ。

「じゃ、そういうことで。そこで反省するんだな」

明良の声でNIGHTSは久我の前から離れ、歩き出す。

「あやっぺもなんか言ったり〜!!なんならボッコボコにしたってもええし!!」

「怖いよ秋塚君・・・」

たはは、と笑う良次に珠美は溜息をついた。

そしてクルッと久我のほうを向き、近づいた。

「なんだよ、さっきみたいに殴れば良いだろ」

久我は珠美から目を逸らし、下を向く。

「さっきは、思いっきり叩いてごめんね?久我君といた時、本当に楽しかったよ!!付き合ってた女の子も皆そうだと思うんだ。だから・・・もうこんなことは私を最後にしてね?」

珠美は制服からハンカチを出すと、久我の足元に置いた。

そして静かに、久我の前から立ち去ろうとした。

「珠美!!・・・ごめん・・・」

小さい声だったが、久我の声が珠美の耳に入った。

この声を聞いた珠美は、久我のほうを振り向かず、明良達の方へ歩き出した。

これで・・・久我君も幸せになってくれると良いな・・・。

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