《MUMEI》

事故以来両親の離婚、家庭内暴力の果て、ノイローゼ気味になってぼくに近付かなくなった母。そして寝たきりの弟に付きっきりでほったらかしの状態。一軒家に住んでいるのはまるで僕だけみたいだった。
 最初は二階にある自分の部屋で、何もすることが見つからず、気力ないまま、ボーっと過ごしてたけど、次第に慣れとはコワイものでー初めての一人暮らしに思いっきりハネを延ばし初めていた。
 夏の始まりにクーラーはお決まり、二階のぼくの部屋だけは全開になっている。ウッド調のアジアンなブラインドは閉め切りで、ディスプレイや家具類にもほこりが被っている。

 掃除しないといけないなー

 学生の頃からぼくは友達と吊るむのは好きだったから、家には食事以外ほとんと寄り付かず部屋も親任せだった。少しだけ思春期を通り越した今となっては、ぼくは自分勝手だなーと思うだけの思考はある。でもあえてこのスタイルを変えようとは思わなかった。
 
 世の中には異様に恵まれてる家庭や、信じられないほど貧乏な家庭がある。人それぞれなんだ。ムリに何かを起こすこともない。募金なんて冗談じゃない!イチイチ他人のことを考えてる暇があったら己の未来でも考えて生きろーだな。

 やりたくないと思うことは、わざわざ自分から火の中に飛び込むようなことはしなくてもいいのだから。
 
 夕方近くになって何の気なしにブラインドから表を見下ろした。道路側には買い物や仕事帰りの人たちでにぎわっている。こんな街から少し外れた軒を連ねる商店街にも色んな風景があるんだなーそう思ったとき

「キーー」

 っと、大きなブレーキ音がした。そして何かが視界を横切り、ぼくの家の庭に入ったように見えた。

「えっ?何」

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