《MUMEI》 引き篭り歴は、長くはなく完璧でもなかった。ほとんど食事は一階リビングにある残り物と、携帯ひとつで持って来てくれるピザに頼り、最近ではすぐ裏の一本道を隔てたレンタルビデオショップへ足を運ぶ単純な生活サイクルまで送るようになっていた。お気に入りだったピザとコーラのセットも食べ飽きて残すことさえあった。いつもと同じ、クーラーの部屋でなんとなくボーっとしていた。 テレビもパソコンも飽きたなあー引き篭もりなんて柄じゃないよ、まったく。 何もやることが思い付かなくて夕方、ぼんやりしたまま期限のDVDを返しに行くことにした。 まだ混んでないだろうと思ってたかをくくって店に行ったら、すでに返却に来た学生とかで列を作っていた。 ここーいつの間にこんなに流行るようになんたんだ? DVDを返しに来たことを少し後悔しながら返すだけ返して、結局何も借りずに出て来てしまった。 家の裏側の一本道の先、商店街に交差する手前にある店だけど大周りをしないと家には帰れない。斜め横断出来ればすぐなのに面倒だなーと思いながらも、仕方なく最近の通いコースをダラダラ歩いていた。 時刻は三時過ぎーふと気が付くと、ぼくの二メートルほど前を見知らぬ少女が歩いていた。熟し切った甘ったるい風がぼくの頬を撫で付ける。ぼくは途中から少女が気になって仕方がなくなっていた。そしていつの間にか間隔を保ちながら後ろを付いて歩いていた。 すでにぼくが曲がるべき道は通り過ぎてる。行く先はやはり自宅なのだろうか?いや、そんなことどっちでもいい。 前へ |次へ |
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