《MUMEI》

この日を境に僕はウソのように外に出るようになった。大切な宝物は泣きも叫びもしない。もしかしたら口がキケナイのかもしれない…
 七歳くらいかな?真っ黒な髪は瞳をリンクするほど神秘的で、壊れそうな水晶玉を抱えてるかのようにも思えた。ぼくの家には女の子はいないから、服は替えて上げられないけど…
何も怖がることはないよ。乱れた長い髪をクシでそっととかして上げよう。汚れた服はいつか買い替えて上げよう。遊び疲れたら眠りに付くまで、そっと髪を撫でていて上げよう。

 あーぼくだけの天使…
 
 何故か恐れていた捜索願いもなく、ぼくが外出するときも、一人でおとなしく部屋でよい子で待っていてくれる。ぼくは帰って来たときの嬉しそうな顔が見たいだけに、何度も出掛けては家に帰るーを繰り返していた。幸いほとんどいない母親にばれることもなく。
ぼくは天使との二人だけの暮らしがこのまま永遠に続けばいいのにーと思っていた。

 だけどひとつだけ問題があることに気付いた。この前高い買い物をして使い果たしてしまったおこずかいの底がつきてしまっていたのだ。手っ取り早いバイトでもしなければやってゆけそうもない。声を持たない硝子の瞳を持つ天使に洗脳され、僕はやがて浸食されてゆく。

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