《MUMEI》
ルナ
午後三時を過ぎた頃、渋谷のセンター街。どこにでも同じ顔をした群れはイッパイいる。そして皮肉にもその中の一人が私だ。忙しそうに行き来するアホコピー人間リーマン、子連れの幸せごっこをしてる買い物袋を下げた化粧のはげた女たち、友達同士吊るんでる茶髪に、携帯をやたらカチカチいじってる光景。スカートの脚を平気で開いて座り込んでる女の子の群れ、その匂いに群がり勧誘し続ける詐欺師たちは、欲望を丸出しにしないように素顔に仮面を貼り付けて微笑みを絶やさないでいる。
 腐った果実に包まれて逃れられなくなった、これも地に落ちた世界の一片なのかもしれない。異様に混じった臭気だけが、夏の気温にドロドロに溶けたアイスクリーム状になってねっとり地上にはびこっている。

 多分、その中に佇む異質で、無表情にドルゲをまとったスーパードールが私といったところかな。話す相手が欲しい訳でも、お金がほしい訳でもない。ただ汚れた地に生まれ落ちた恨みの塊に満ちた私が、記憶を抹殺するかのごとく新世界に向けて祝う前夜祭のようなもの。
 簡単だよねまずは自我を殺して相手をも巻き込む。人間なんて美しき地球には存在すべきではナイのだから。そして私自身も…
 施設を出て今の両親に引き取られる頃から、すでに体を売るこの生活が染み付いていた。

 物心付いた頃、私の両親は事故で他界した。残されたのは一人娘の私だけ。
 基本的には遺産とか親戚の見栄やらで、周りには羨ましがられる生活、デザイナーズマンションでの独り暮らしが出来た。

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