《MUMEI》

コンクリートに埋め込まれた大理石にキリストを思わせるタペストリーは、宝石をちりばめたオーナメントをあしらって、地味な空間を妖しくも美しく輝かせている。それほど広くはない部屋を、ミラーの魔術で奥行き深く魅せるテクニックは流石プロフェッショナルだと思う。
 今通ってる学校も、両親の遺産と親戚の見栄でなんとなく通うことにー高校からそのまま進級出来るキリスト系の女子学園は便利で綺麗だけど、私にとっては暇つぶしでしかなかった。
 服装は一応紺色のロングワンピースに決まっていたけど、高校生みたいに決められた環境はたまに息苦しくなって休むこともあった。多分、今の両親に引き取られていなかったら即効ー辞めていただろう。
 学校ではリアルブラックの私のヘアースタイルは今どき珍しいらしく受けは良く、卒業までほとんどテストでなくレポート提出で済みそうだったから、そうゆう意味ではけっこう楽だった。
 高校みたにイヤな教科で当てられて無理に答えることもなく、大人しくお人形さんのようにお座りしていたらいいのだから。
 残された遺産で十分遊ぶだけのおこずかいはあるし、たまに抜き打ちでかかってくる両親からの電話にだけ対応していれば、シンデレラの様に十二時頃に家に帰っていれば間違いはないのだから。
 携帯電話とはいえ、オールのときは場所考えて電話に出ないといけないけどね。
 
 渋谷の街中、日傘もささずに真夏の陽射しにビタミンCの錠剤はかかせない。ついでに毎日の栄養も錠剤で摂ってしまおう。
お金に困ってる訳でもなく、友達と待ち合わせしてる訳でもなくーなぜ私はこんなとこに立っているのだろう?
 腰まで下げたバギーパンツはブーツカットより流行かもしれない。トップスは白いニット、長袖にしないと手首の傷が目立つからこの時期ホントにキツイ…

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