《MUMEI》

すべてに恵まれた生活。荒れることのない空間。欲しいものは何でも手に入る他人が羨ましがる絵に描いたような安らかな国のお城のお姫さま。やみくもに掴んだしあわせとは違ってすべてに置いて底辺の出来上がった生活。でも、こんな安定した生活を誰が望んだのだろう?
 物心付いた時期に知った。二人は私をただの宝石の一つとしか見ていないことを。ママはルナとゆう響きに憧れていただけ。いつも遠くを見たままルナとゆう名のゆえんを自慢気に話していた。

 ママはいったいどこを見てたの?何を望んでたの?目の前の私はちゃんと見えてたのかなあ?

 養子に入ったパパは周りに嫌われたくなかっただけ。宝石を眺めるママのことを気に入って、これが自分の選んだ輝かしい場所なんだと思い込み、少しでもソレてしまうことを恐れた。
 いや、恐れることさえも出来なかったのかもしれない。まったく道化だよね。これが私の家族なんだ…

 偽りで包められた紅いヴェールは、次第に私の心を蝕みはじめていた。

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