《MUMEI》

優しさの象徴で部屋いっぱいになったクマやうさぎの縫いぐるみたち。人気のないエメラルドな空間。ウソで創られた砂よりもろい硝子の城。やがて優しさをかたどった言葉はアタマの上をゆっくり旋回し通り抜け、ゼリー状の液体だけを染み込ませ、無防備な心に無の塊を命じた。

「ありえない!」

 私は宝石のたった一個に過ぎなかった。深海に眠り海の中から見上げることしか出来ない鉛とゆう名の宝石。永遠に変わることはない無情の代物。生まれてなんて来なければよかった。ここは私の居るべき場所ではなかったのだから…
 優しく顔を撫でる微風はもう私にとって何の意味も成さなかった。一瞬頬をつたった涙。この世に生まれ落ちたことへの失態、恨み、抹殺、アタマの中にドロリと液体が創られた瞬間。
 すべてに恵まれてるハズなのに、私自身は何ひとつ欲しいとは思わなかった。すでにぐったりとなった感覚は、残酷で大きな染みを残しルナとゆう物体にろ過し、再び二度と消せない刻印を残した。
 そしてさっきまで無造作に置いてあった飲みかけの缶は、無表情な感情と共に、車へと投げ込まれた。

 幸せごっこを永遠に封印し消去するために…

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