《MUMEI》

暑苦しい時間を過ぎ、早くも仕事帰りの人間が行き交う時刻ーぼくは迷わず携帯電話を押していた。
 芸能界に浸かりきってナンパを兼ねて犯罪みたいなことを繰り返してる元同級生。学生の頃クラスで一番口が上手く女を近付けては危ない道へと手招いた男。カモを見つけたら容赦なく落とし入れる人間として最低なヤツ。
 きっと彼は途中で学生をリタイヤしたぼくからの電話で、びっくりすることだろう。ってゆうかーぼくのこと覚えているのかもわからない。
 茶々丸。このニックネームのせいで、危なげな男も楽しく調子よくて面白いヤツとして女の子には人気があった。確か名字に茶が付いていた気がするけど、そこまで親しくないからはっきり覚えてはいない。そしていったん裏の世界に引き込まれてしまってからのことを知ってる友達の間では、かなり恐れられてる存在だった。
 学校通いは表向きだけ、授業中は音を消した携帯をいじってゲームに没頭。先生に見つかってヤバくなりそうなときは仲間が教えてくれることになってるから心配はない。ワルイことにだけは仲間でない仲間も勝手に団結、こうゆうことには皆最高に優れていた。
 万が一見つかって先生に怒られるような状況が起こったら、間違いなくその先生はボコボコにされるだろう。学校の空気は、たとえ先生でも乱してはいけないのだ。男女共学なのに女子も何事もなかったように平気で過ごすのが当たり前。要するに学校とゆう場所を借りて、ぼくらは卒業に向けて退屈な日々を費やしてるだけ。授業なんてどうでもいい訳だ。
 この変わった雰囲気はぼくが高校に入る前からあったらしく、多分ぼくが居なくなったあとでも続けられていることだろう。

 学生生活にリアルなんていらない。ぼくにとって欲しいのは漠然と過ごせる時間と、退屈な日々の経過ーそれだけだ。

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