《MUMEI》

そんなヤツへの電話だ、覚えてないかもしれないし、たとえ覚えていたとしても、あやしまれて仕方ない。茶々丸が電話を受けると、いきなり活発な営業被れの声が飛ぶ。
そして名乗った途端に、

「あー」

 気の抜けた返事が返って来た。ぼくのこと覚えてたのか?ってゆうか、やっぱりやなヤツ!

 渋谷のど真ん中、待ち合わせ場所にすぐにアイツはやって来た。久し振りのご対面、何度も染め直したでだろう金髪は、頭の上で家事でも起きたのではないかと思うほどボサボサのロン毛。ズリ落ちそうなパンツに見るからだらしのない格好は、一般的な人間だったら絶対知り合いになりたくないと思うほど。
ベルトは付けなくてもいいんじゃないか?

 斜めに構えた姿勢で世の中をナメきって、オレが一番だと言わんばかりにジャラジャラと音を立てて向こうから歩いて来る。
 電話でぼくから頼んだとはいえ、引き受けたことを一瞬後悔はしたけど、とにもかくにもお金が欲しい。すぐにでも後ろを振り向いて帰ってしまいたいとゆう感情をかなぐり捨てて二・三歩前進した。
 面倒だからあいさつも無しでもいいだろう。ぼくは前置きなく直行で伝えた。

「バイト探してるんだけど。すぐがいいんだけど?」

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