《MUMEI》

足が棒だよー今日はもうあきらめて帰ろうかな…

 フラフラ歩いてると向こうからどこかで逢ったような顔が近付いて来た。もしかして学生の頃付き合ってほしいと言われてから、何も答えることなく急に退学してしまったぼくに、返事だけでもほしいと何度かメールをしてきた女の子、さゆりだ!
 結局そのメールには返信しないまま逢うことはなかったのだけど…
 近付いて来る雰囲気、なにもかもが自然に出来上がってる感じが今も変わらない。軽いソバージュヘアーはロングになってたけど、うっすら陰りの出る時刻でもモデルのような顔立ちはすぐに彼女だとわかった。

「グッドタイミング!」

 本当のところ、好きでも嫌いでもなかった。単独で行動するぼくにとって、こうゆう誰にでも羨ましがられる女は面倒なだけだ。
あのときはメールが途切れてほっとしていたのに、今は向こうから飛び込んで来てくれたと、両手を広げて内心小躍りしてしまうなんてーやっぱりぼくはズルイ。
 茶々丸に紹介することに少しだけ罪の意識みたいなものがあったけど、これを逃すと次にいついい女が捕まえられるかわからない。
慣れてないバイトにこの体力の限界、もうすっかり忍耐力も衰えていた。
 早く帰りたい、僕のの部屋へ。僕とJUJUの二人だけの秘密の世界へ。

僕の宝物はちゃんといい子にしてるかな…

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