《MUMEI》

とりあえず、すぐにでもお金が入ることは間違いなかった。彼女だったら七万位は出しても惜しくないだろう。まあ、とにもかくにも今はお金がほしい。だから仕方がない。これも久し振りに逢ってしまった運命みたいなもの。あきらめてもらうしかないのだから。

「スズナリクン?涼鳴琥珀君よね?」

 生まれてからイヤとゆうほど呼ばれたフルネーム。涼鳴とゆう名字に、いつも嫌悪感を覚えていた。名前の琥珀はけっこう気に入っていたけど。
 出ていって離婚を突きつけた父と、何も言い返せなかった愚かな母と同じ名字。唯一許せるとしたら、事故以来病院で寝たきりの弟くらいだ。懐かしさと、呼ばれたくない心が入り乱れ葛藤する。そして許せない心が再び浮上して、僕に勇気を与えた。

「久し振り、変わってないね」

 優しいクールな笑みと共にもう引き篭もりの琥珀ではなく、仲間と吊るんでいた頃の堕落した学生モードにワープしていた。
 もう後戻りは出来ない。二人の距離は徐々に近付いていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫