《MUMEI》

数時間後、琥珀はもとクラスメートだった高倉さゆりとスターバックスの近くに居た。
見た目は高級キャバ嬢もどきだけど、話せばすぐに理解しようとする素直な世間知らずのお嬢さま。付き合ってくださいと告られたまま逢ってない僕にとって、どっちでもいい女の子。彼女は絶対にノーとは言わない。彼女と逢った直後に潤んだ瞳を見てぼくは確信していた。
 僕は本当にズルイ。昔からこんな感じで適当にやってきたのだから、よっぽどの発明者が現れない限り今更治ることなんて有り得ない。
 高校に入って見栄を張って買ったオメガの腕時計に、シルクの濃紫スーツ。ヘアーはもともと茶色っぽいからグロスでまとめて濃厚なサングラスを身に付ければホスト系出来上がり。楽勝!
 軽い世の中に生まれてきたことは間違いではなかったようだ。
 とりあえず目の前のスターバックスでーと思ったけど、すでに彼女の瞳は潤んだ状態で、さゆりから繋いだ手から体のほてりを感じた。

 なんだ、こいつもうでき上がってるじゃないか。

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