《MUMEI》

けっこう早い展開に安心して黙って五分ほど歩くと左側に細い路地、その先にはホテルが見えた。
 繋いだ手に軽く力を込める。そっと彼女の顔を覗き込み、さりげなく促してみる。彼女の頬はうっすら色付きOKのサインを出していた。そして当たり前のように彼女とラブホへ。
 少しくらいは優しそうに振る舞っておいた方がいいだろう。心の奥深くに潜む罪の意識が、自然と好きと思わせる愛情に似た行動を起こさせていた。
 部屋に入ると彼女はぼくから服を脱がそうとする手を止めて、自分からシャワーを浴びにバスルームに入った。薄暗い部屋にバスルームの明かりは、ほどよいシルエットで、ぼくに男だったとゆう感覚を思い出させた。好きな女でなくても男はセックス出来るのだから。
 ソバージュの髪の雫を拭き取ったさゆりはやっと自分のことを気にかけてくれたと思い込み、完全に過去の恋心のまま女モード全開でぼくを受け入れた。
 自称、引き篭もりが笑える。若干鈍った感を取り戻すのに思ったほど時間はかからなかった。彼女を抱く姿は悪魔が魂を食らう化身として鏡に映り、その姿にぼくは何の感情を持つことはなかった。

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