《MUMEI》

とりあえず雰囲気からして、どうやらさゆりではなさそうだ。でも運が悪いことは続くものだ。どうやら一組のカップルが今居る部屋に入って来てしまったようだ。
 大きく溜め息を付くことも出来ず、バック音に掻き消される位の溜め息を長く吹き出した。そして三分だけでも早く出なかったことをすごく悔やんだ。
 再び狭い空間に座り込んだ琥珀はカップルに妙な感じを覚えた。まったく会話がないのだ。服の擦れる音と入り口を入るときの靴音以外は。
 間接の照明は上の方に設置されている。多分ベットにある手元で明るさを調節出来る仕組みなのだろう。磨り硝子に透明な模様が組み合わされていて、覗く場所に寄っては二人の様子がよく見える。
 中年のリーマンぽい男は二十代半ば、スーツをハンガーに掛けることもなく、さっさと着てる物を脱ぎ捨ててしまった。その相手の女性は金髪で巻き毛のロングヘア。
 女性が真ん前のスタンド照明を就けた。色は白くて遠目からも透けた肌は、唾を飲むほどに神秘的な若さを保っていた。
 長い髪をかき上げながらショッキングピンクのワンピを自分で無造作に降ろし、薄いピンクのパンティーの紐をスルリとほどく。ふくよかな胸には何も身に付けていなくても十分美しい形を保っている。さっきまで諦めかけていたぼくは、今得した気持ちになっていた。この部屋に潜り込めたぼくはラッキーかもしれない。期待感と忘れかけてた性欲で、息を荒くしないように抑えるのが必死だった。

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