《MUMEI》

 彼女は殺人鬼?

 いや、違う…

 最初の一撃は確かにビックリした。あの華奢な天女が脚を男に向かって振り上げたのだから。でも二度目からは違う。ぼくにはコレが、何かの戒めのようにしか思えなかった。
ぼくは一瞬で神経がマヒしてしまったのだろうか?不思議に恐怖より新しい天女を見つけた快感の方が上回っていた。
 そう、美しい天女の羽衣を盗んだ男への罰を下してるーみたいな。命と同じくらい大切な羽衣は天女にとって無くてはならない物。お仕置きを受けても何もおかしくはない。天罰とでもゆうべきこと。
 次第にことの恐怖を感じた男は必死に手錠と縄から逃れようとする。けどまったく動くことは出来ない。声を荒げることも出来ず、体をひねり痛みにこらえるしかないのだ。そして戒めは止まることなく何度も繰り返される。鈍い音が部屋を充満する度にヒールの先を真っ赤な血が舞う。なんとゆう美しい光景なんだ…
 次第に男のたくましい背中は獲物に狙われて果てた悲惨な塊となった。
 十五分ほど続いたのだろうか、すでに男は失神して身動きひとつしなくなっていた。
 美しい天女は顔色ひとつ変えない状態で塊をそのままにして、汚れたピンヒールともげたヒールの先をダッシュボックスに投げ捨てた。

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