《MUMEI》

しばらく人間の温かさなど感じてなかったし、感じようとも思っていなかったからー
余計に自然と瞳が潤んでくる。こんな気持ちになれる場所が大都会に、しかも図書館の中にあると誰が思うだろうか?
 ここはルナにとって授業のない時間、学校から友達から逃れて独りきりになれる唯一の安息場だった。大きなテーブルのスペースがない場所には椅子だけ置いておこうと考えたのだろう、この図書館の数ヶ所には椅子だけスペースが存在する。
 それでもここは特別指定席だ。同じとしてこの蓮の華は存在しない。

 陽の当たる場所には居たくない。誰にも邪魔されたくない。しかも大きな棚に隠れて存在さえ気付かない人が居るくらい地味で湿気のある場所。誰も望んで座ろうとはしないこの席。

 ここは私だけの大切な空間。

 ルナはある調べものをしようとしていた。

 できる限りの辞典や新聞を手に、ルナは一心不乱になって調べ始めた。明け方にかけて発見したモノ、海底にあった十字架として眠るお墓を。

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