《MUMEI》

いったいどうしてこんな所に?誰のお墓なの?それとも形だけ十字架のオブジェ。それなら何の象徴?
 気になって仕方がない。私はこの場所に着くなりメモを片手に懸命に調べ抜いた。どれだけの時間が経っただろうか、昼頃に来てもう夕方に差し掛かる。

 やっぱりそう簡単には見つからない。

 何度も読み返したり、もしかしたらページを飛ばしてしまったのでは?と、ただでさえ沢山の書物類を片っ端からあさってゆく。尋常な作業ではなかった。据え置きのパソコンでも検索してみた。それでもルナの探してる海底と十字架のリンクしてる情報はまったく無く、この図書館でなかったら他の小さな街に行っても見つかることは奇跡に近いと思った。

 海底に佇む墓石は最初は苔におおわれていた。いつからここにあったのだろう?何度か訪れた秘密の場所、海底の岩だとしか認識していなかった。

 もしかしたら私が気付かなかっただけなのかもしれない。

 そして深夜、すべり落ちた苔の隙間から偶然存在を確認することが出来た。夜が明ける前に、そろそろ帰ろうと思っていた瞬間の出来事。帰るのがほんの数秒ズレてたら永遠に見つけることはなかったかもしれない。
 手で少しずつ苔をはがしてゆくと、そこには十字架を象ったお墓が佇んでいた。私は取り込まれそうな感覚を必死に押さえながら、荒れ初めた波の変化と共に引き上げて来た。
ほんとはあのままずっと此処に居たかった。誰にも邪魔されない場所に、ずっと身を置いていたかった。でも夏も終わり頃になると海水が冷たくなる。仕方なく立ち去ることにした。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫