《MUMEI》

「どうして私だとわかるのよ」

 恐るおそる聞く私に、透き通った儚い瞳は少し眩しそうに目を細めて、

「だって間違えるはずがない」

 どうしてこんなに自身を持って言えるんだろう。

「似てるけど人違いかもしれないでしょう?」

勝ち負けでもないのに、負けたくないかの如く即効切り返してしまう。赤子を見てるような瞳は再び輝きに戻る。ポケットに突っ込んでいた両手をゆっくり戻して彼は言った。

「わかるよ、ぼくには。だって君の瞳は漆黒を秘めているから」

 まるでドラマの様なセリフ、思わず吹きそうになったけど彼はモロ真剣だった。

「それにほら、ピンクとシルバーのロザリオ、もしかしたらキリスト信者とか?」

 信者といえば学校がそうだからそうかもしれないんだけど。私服に着替えるときは必ず外すはず、バレてはいけないとあんなに気を付けていたのに。私はこうやってバレていたことが、今まで気が付かないうちにあったのかもしれない?周りが知らない振りしてるだけ?
 それにしてもちょっと突っ込み過ぎ。たかがホテルで目撃しただけで、プライベートに入り込まれる筋合いはない。この場はいっそ他人の振りをして置いた方がいい。不安そうな顔をしたルナを読んだのか、顔を覗き込んだあと、

「ぼくだからわかったんだよ!」

 と、さっきまでの顔とはまったく違う真顔でハッキリ言葉を付け足した。

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