《MUMEI》

ああー切りたい、真っ赤な血液を見ないともうダメ。滴り落ちる紅い華、朱の業。

 たすけて、たすけて…

 こんな状態も時間にしたらきっとほんのわずか。ときに時間は私にねじれた記憶を与え、塗り替えることは絶対に許されないと意地悪な仕打ちをする。

 ホントに、洒落ではすまないよ。

 そんな私の感情なんかよそに、胸元の十字架をジーっと見て、

「LUNA…ルナ、いい名前だね」

 そう言ってテーブルに置いてあるペン立てをしばらく見つめて、おもむろに紅いマジックを取り出す。そしてルナの左の腕をそっと持ち上げて、巻いてある包帯の上に丁寧に文字を書き印した。

(琥珀)

陽が落ちる瞬間、光と闇に導かれて、神のいたずらに私たちの運命はリンクしてしまった。

 もう後戻りは出来ない。

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