《MUMEI》

あれ?

 座ろうとした琥珀はとっさに立ち上がり慌てて道路を渡って、こっちに向かって歩いて来る女の子に無謀にも近付いて声をかけてしまった。

「その人形、どうしたの?」

 いぶかしがる女の子。それはもっともだ。
一緒にいる友達数人も、大変迷惑そうな顔をして斜めに構えている。
 今日の服装はジャージではないけど、アバクロのカーゴパンツに黒T、髪もとかしてこなかった。どっから見てもあやしいナンパ男。人形を見た瞬間に思わず駆け寄ってしまったけど。多分、無視されてしまうかもしれないと思い、すぐに言葉を続けた。

「僕が落としたのと同じ」

 彼女のバックに付いてる人形を指さしてボソっーと呟いた。

 上品そうな雰囲気の女の子は、しばらく濃いまつ毛をパチクリさせてーこわごわ話しかけて来た。

「もしかしてルナの知り合い?」

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