《MUMEI》

「どっこいしょ」

 若いのについ言葉が出てしまった反応に再び笑われる。ああ、やっぱりクーラーはいい。現代人なるもの、この時期、太陽の真下で長時間過ごすなんて有り得ない。ぼくはルナを探すことしか考えてなかったから。暑さもキツイとかも、面倒で途中から投げてしまいたいとも思わなかった。ぼくは思い込んだら真っ直ぐにしかゆけないバカなのかなあ。
 
 喫茶店の中はそれなりの広さがある焦げ茶色の椅子とテーブルがセットになった真新しい雰囲気だった。表から見ると濃緑の三角屋根にレンガの創りが古く感じたから、店内だけ模様替えでもしたのだろう。
四角い樹の柱にはインスタントの蔓が巻き付いている。学生が帰りに寄って帰るには調度いい感じだった。途中まで案内されたけど、結局ぼくの指示で奥まった階段を幾つか降りた席になった。ここなら周りを気にしないで話せる。
 入り口近くの席にだけ数人の男の子たちが座っていた。夕食前の静けさでモダンにクラシックだけが流れている。屋根は高く空調システムが効いてとても気持ちがいい。それに、この低いフロアには二つしかテーブルがないからかなり緊張感も抜けてしまっていた。
僕はアイス珈琲、彼女はアイスレモンティーを早々注文して汗を拭くタオルを置いたとき、もう話してもいいかなと思ったのか両肘をテーブルについて、

「ルナの彼氏なの?」

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