《MUMEI》

語りはまだ終わってはいなかった。

「ルナの今住んでいるマンション豪華でしょう?デザイナーズマンションで、かなり上級の人でないと借りられないのよ。今言ったように引き取った両親は海外にも店舗を持つジュエリー専門店、お金持ちなのよ。どうやらルナの本当の両親とはライバル会社だったみたいだけど、そんなことも気にならないくらいにルナのこと大切みたいなの。やっと授かった一人娘に恥ずかしい思いは絶対にさせたくなかったのね。自由とお金、これさえあったらあたし何でもして上げちゃうのに」

 羨ましさで大きなため息をつく美羽に、声を出さないで

 君にはムリだよ。

と心の中だけで言っておいて上げた。

 話しは一応終了したようだ。かき混ぜていたアイスティーはそのまま、使用してなかった手拭きの封を今頃切って指を丁寧に拭いている。
 施設に入ったルナがシンデレラのように引き取られた話しがそんなに羨ましいのか?話しをしてくれたことには感謝だけど、内心苛立ちを抑えられなくなったぼくは気分が悪くなりそうになって早々に立ち去ろうと思った。ぬるい薄茶色の水を一気に飲んで空になったグラスを横に置き、財布から二人分をジャラジャラと出す。

「そろそろ行くよ」

 突発的に席を立ったから美羽は、初対面なのにしゃべり過ぎたかな?とゆう表情を一瞬見せたけど、やっぱりちゃっかり支払いはぼく任せ。別れ際に、

「つい色々話しちゃったけど、いつもルナに聞いてもらってるんだけど…ここ数日連絡とれないから、琥珀君に聞いてもらったみたいでごめんね。これ、学校のノート。ルナに逢ったら早く学校に来てと伝えてね」

 そうだった、今ルナがどこにいるかを聞くつもりだったのに目的がブレてしまっていた。でも連絡が付いてないことだけは確認出来たから。
 一方的に話したらおしまい、頭が空っぽな女の子。キリスト系の学校は見かけとお金が合えば誰でも入学オッケーなのかな。

「ねえ、琥珀君。また会えるよね?」

 上目使いをする美羽にニコリとだけ微笑んで、さっさと珈琲屋を後にした。

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