《MUMEI》

大理石の床を真っ赤なじゅうたんが目指すルナの部屋まで導いてくれる。朝になると差し込むであろうはめ殺しの窓にはステンドグラス、ずっしりと構えた柱はギリシャ神話を思わせる彫刻で映画の中に飛び込んだ気持ちにさせてくれる教会みたいだ。何度来ても始めの一歩を踏み出すには勇気がいる。
 今日は昼間から動き続けているけど不思議とほとんど疲れがない。もし此処にいなかったら、いかれた男達の汗とdragやginの混ざった匂いでむせ返りそうになるクラブの中へ初体験ゴーだ。

 どうせ帰ってないだろうなー

 何気に覗いたポストには、たまっていたハズの広告や手紙がなかった。

 もしかして、ルナはもう部屋にいるのかもしれない?

 このデザイナーズマンションは、管理人とゆう人間を使おうとしないところまで洒落が効いていた。管理用のビデオだけで基本的には中に入れてしまう。なんとずさんなーぼくにとってはラッキーだけど。

 九階まで一気にエレベーターで上がる。エレベーターに乗ってからルナの部屋の前までずうーっと、此処まで来た理由付けを考えていた。だけど意外とすぐに思い立った。昼間、美羽から渡すように頼まれた大学ノート。れっきとした言い訳けになる。

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