《MUMEI》

焦りと恐怖と救いたい気持ちで何をやったらいいのか戸惑ったけど、まずはやっぱり救急車を呼ぶべきだとーこの部屋の電話機を探し始めた。

「あー早く電話しないと、救急車、救急車…」

 慌てふためくその傍で、眩しそうに顔をしかめたルナがムックリと起き上がった。

「何…してるの?」

 えっ?

 物凄く普通のルナからの第一声。

 今は確か緊急事態だよな?

 視点が定まらずもうろうとしたルナは、右腕を軸にゆっくり床から体も起こしかけてー

「平気だよ、これくらい」

フっと微笑んで再び床にパタリと倒れた。

 このときぼくは皮肉にも、初めてルナの笑顔を見たのかもしれない。

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