《MUMEI》

結局ぼくが救急車を呼んで、夜間診療で手首を縫ってもらった。以前にも何度かリストカットして、自分からこの総合病院に来て、

「切ったから、縫ってください」

と言ったことがあるらしく、たまたま夜勤だった担当医は、また君かと言わんばかりの顔をしてー

「今回は深くまでやってくれたね、君の意見は聞かないよ。しっかり縫わせてもらうからね」

 そう言って、今夜はよく眠るようにと安定剤と痛み止めを用意してくれた。

 ぼくがさっき入ったばかりの部屋に戻ってからのルナは、ぼくが此処にいることに何の疑いも持たず、何も聞こうとしなかった。右手で抱え込むようにしてる左手に巻かれた包帯は痛々しく、少し熱があるのかな?と思わせる瞳は潤んで光に反射し、無口なままのルナはとても儚くこぼれ落ちそうな感じでーぼくの方が哀しくなって来た。
 多少、血の気のない顔色でも創られた人形のような素顔は白くとても綺麗だった。冷蔵庫に入ってるミネラルウォーターを勝手に開けて、病院でもらった薬を飲ませて隅のベットまで運んで寝かせる。

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