《MUMEI》 「照明消して」 それだけ言葉を残してルナは深い眠りに入った。シルクピンクのベットシーツはルナのシルエットをぼんやり浮かび上がらせて、おとぎ話の中で思わず優しい子守歌を歌って上げたくなってしまう。 一息ついてルナの飲みかけのミネラルウォーターをひとくちだけもらうと、やっとぼくも落ち着いた。 この部屋に入ったときは、中までコンクリートに大理石がはめ込まれた冷たい空間とばかりだと思ってたけど、窓枠や備え付けファニチャーにあしらわれた樹木のデザインは温かみを持って意外とこの空間を緩和させていた。 青白くぼくの足元を照らしてくれてたのは、部屋を斜めに仕切るように置いてある大きな熱帯魚の水槽だった。優雅に泳いでるベタはメタリックブルーにグリーン、オレンジのひれを持っている。タイやインド、スマトラの鮮やかな二匹の熱帯魚が何事もなかったかの如く、優雅に水槽の中を横断していた。 ここは南アジアを思わせる深海ワールドだね。 たまにポコっとゆう音だけが支配する中、ぼくはこの夜ずうーっと深くまったりとした海底に身をゆだね、いつ瞳をあけるかわからない眠り姫に付き添っていた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |