《MUMEI》

もうろうとした意識の中で救急車を呼んで書き置きだけ残して病院だけ付き添って消えてしまった琥珀の残像が何度も思考を狂わせてる。飲みかけのカップやルナの灰皿からこぼれ落ちるほどの湿気を含んだお香みたいな煙草の吸いがらが、朝まで琥珀と一緒にいたのを物語っていた。

 本当はあのまま死んでもよかったのに…

 ホントに琥珀は余計なことをしてくれたものだ。

 それにしてもどうやって私の部屋に入って来たのだろう?いつもは一歩も入ろうとしないのに。まるですっかりバレてるストーカーみたいな追っかけだったのに。

 もしかして心配してくれたとでもゆうワケ?

 一瞬込み上げたーこれが愛情?に微妙な感覚を覚えながら、それを打ち消すかのように携帯を取り出し無心にメッセージを読み始めた。

 美羽、美羽、琥珀、美羽…

 はあーいったい何通来てるの?

 しかもボディーバックに入れっぱなしでまったく気付かなかったけど着信まであったみたいで、古いメッセからひとつずつ読んでゆく。最初は美羽からの学校に来てねメールから始まって、どうやら追っかけ男が学校まで来たらしく彼氏とゆうことになっているようだった。そしてラストまで括ると琥珀からのメールまでも。

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