《MUMEI》

別に追いかけて来るとまでは思わなかったけど、あの茶々丸のことだ、何をしでかすかわかったものではない。
 最初は自分の部屋にルナを隠そうと思ったけど、部屋にはずっと一緒にいる天使が何も知らずに眠っているから、いきなりルナを家に連れて行くわけにも行かなかった。それにルナもいきなりぼくの家は望まないだろうし。
 色々考えを巡らせながら結局やみくもに公園から少し離れた路地へと入り込み、途中で偶然見つけた壊れかけた廃虚の突き当たりまで逃げ込んだ。ここなら絶対に大丈夫。
 薄暗い場所に入ったからなのか、一瞬ルナの顔が青白く見えた。動きが止まって話しかけてもいいかな?と迷ったけど、思ったと同時に声に出していた。

「大丈夫?」

 ルナはまだ呆然としている。病み上がりでせっかく表に出て来たとゆうのに、こんな展開になってしまってーきっと驚いたことだろう。
 無意識に包帯の巻いてない腕を掴んでここまで来た。でも彼女の腕は華奢だ。一瞬あの夜のふくよかな裸体とのギャップを思い浮かべて言葉が続かなかった。
 二人ともコンクリートの壁にもたれ掛かったまま沈黙が続いた。

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