《MUMEI》
魔女の優しさ、剣士の想い
「おはよ〜」
笑顔で挨拶する彩詩。殴り起こしたとは見えない。
ざっと周囲を見渡すと、彩詩に眼を留める。
「主人・・頭が殴られたように痛いのは気のせいでしょうか?」
「さぁ?気のせいじゃない?」
笑いながら誤魔化す彩詩。
「やれやれ・・」
小さく聞こえた声に素早く反応する式夜。視線の先にはハンディングがフードを取り、佇んでいた。
「ハンディングさん・・お久しぶりです。」
しばらくの沈黙の後、立ち上がりハンディングの側へと寄って行く。顔には嬉しそうな笑み。
「そう・・だな。3年振りと言った所か。」
困ったような表情を浮かべるハンディング。
「・・・記憶は・・戻ったか?」
しばらくの沈黙の後、式夜に尋ねる。答えは・・知っているのに。それしか話すことが無いことに、悲しさを覚えながら。
「いえ・・昔の記憶は全然・・」
申し訳なさそうに、声が小さくなっていく。
「ですが、今、私は幸せですから・・それで良いと思っています。」
ハンディングに笑顔を向ける。幸せだと信じてもらえるように・・
「・・そうか。」
ポツリと呟き、背を向ける。
「また、色々教えてくれませんか?」
その背中に問いかける式夜。
「・・彩詩に聞けばよい。我よりもきっと良いことを教えてくれる。」
式夜の前に半透明なウィンドウが展開する。
〔ハンディング様が友人登録を要請しました。受け入れますか?〔YES〕〔NO〕〕
「・・・話くらいなら聞く。いつでも呼ぶが良い。」
そう言うと、滑るように歩き去って行く。
「・・はい。」
小さく返事をする式夜。嬉しそうに、ウィンドウを見ながら・・
「ハンド、しばらくはリーベルに居るらしいよ。」
後ろから彩詩の声が聞こえた。
「修練場に戻るよ。」
式夜は、しばらくハンディングが歩き去っていった方を見ていたが、その声に振り返ると、
「はい!」
満面の笑みを浮かべて頷いた。

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