《MUMEI》

もちろん、それでもちょっとしたことで頭の中にドロリとした液体が流れ込むことはある。それは突発的にひいたカゼのようなもので、きっとこれからも一生治ることはないだろう。それに自分自身が鉛(なまり)の存在で在るとゆうことも。
 これが私自身なのだから。このままでいい。何も変わることなどナイ。

 たまに浄化をしに秘密の浅瀬へ行って気の済むまでブルーな魚になって身を任せて心を捧げるか、部屋で洗礼の紅い儀式を行いひたすら地の底へ落ちてゆくか、それとも図書館の隅にある私だけの場所ー蓮の形をした華に抱かれて安らかに眠るか。

 琥珀は今頃何をしているのだろう…


 この日の帰りは図書館に寄ると言って美羽と別れた。もう秋の空が見え隠れするこの時期、何か古い物を脱ぎ捨てて、一歩を踏み出しなさいと言わんばかりに。いつもの特等席はもちろん誰も座ることなく、私だけのために蓮の華を広げて待ちかまえていてくれてた。
 この間見つけた深海に眠る十字架の秘密を、もう一度なんとか探そうと何冊も本を重ねたけど思ったようにことが運ばない。今ひとつ集中力に欠ける。つい辺りを見回して琥珀を探してる自分に気付いて、思わず苦笑いしてしまった。

 ばっかみたい。

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