《MUMEI》

いやだ、戻りたくない!

 気が狂いそうな自分を押さえ切れず、大声を出していた。

「やめて、やめてーーー」

 取り乱したことのないルナが叫ぶとは、流石に茶々丸も驚いたのだろう。焦ってもうひとりの連れの男に命令する。

「おい!」

 目配せでわかった!と頷いた男はクスリでフラつきながらも私の口元にタオルを当てた。
 記憶が遠のいてゆく。ヘラヘラ笑ってる男たちの顔だけが視界を占めて、やがて薄れて消えてゆく。

 二つのルナは、いま暗闇に落ちて行った。

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