《MUMEI》

いつの間にか手の中にある金属のバットの様な物を闇に向かって振り降ろしていた。気が狂ったようにあっちにこっちに。錯乱した状態で、もう何が何だかわからなくなっていた。数年前に母親に暴力を振るったときのように、すべてぶち壊してやりたいと思う感情がそのまま原動力となり行動を起こしていた。
 やがて疲れ果てもう限界だと思い、ぼくはうなだれた。そこにはもう闇だけの世界は無かった。

 真っ赤な布団だけが目前に敷かれていて、スポットライトをあてられているかのように。ぼくはいつの間にかステージの上に立っていた。色はまるで一種類しかないかの如く此処にだけ紅い色が存在した。

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