《MUMEI》

 この間のバイト料はしっかりもらったし、とりあえずまた頼まない限り用事はないはず。それともバイト料半分返せとか?もう一度やらないかーみたいな勧誘的なものとか?
モーニングコールがヤツだなんて最悪の朝だけど、用件だけは聞いてみることにした。

「ヘヘ、今度も上物が引っ掛かったぜ。お前にも礼してやるよ」

 つまらないことで電話をかけてきたと思った。思わず電話番号変えたいとさえ思った。いらないよーと即効切ろうとしたとき

「孤児だったくせに十字架なんて、なんだか笑っちゃうよな」

 マジかよ…

全身が凍りついた。体中の血を一滴残らず抜かれてしまったような感じ。

 冗談じゃない!

 電話を切るや否や着ているパジャマを脱ぎ捨てて手元にあったシャツ類を羽織りながら携帯やナイフをポケットに押し込み慌てて駆け出していた。

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