《MUMEI》

「今だ!」

 ルナの手を引いて必死に逃げる。足元のふらつきはぼくがフォローしながら必死になって公園から出来るだけ遠くに逃げた。茶々丸は追いかけて来ない。唯一ひとりだけいた取り巻きもどこかへ行ってしまってるから、多分これ以上は追いかけて来ないだろう。取り巻きのヤツらはいなくてホントによかった。
 でも一応念のため、ぼくの家は知られてるからマズイし、いつものファーストフード店は避けた方がいいと判断してルナのマンションに隠れることにした。

 数分後、ぼくとルナは熱帯雨林の一角、ブルーな空間に身を包まれた。もう、こうやって逢えないかもしれないと思っていたぼくにとってこれは嬉しい展開のハズなのに、動揺が抑え切れないでいた。引き篭もり以前学生の頃、ひと通りワルイことはした。でも元々ケンカが強いタイプではなかったから、自分からあえて向かってゆくなんて有り得なかった。いつも暴力好きな連中んに任せて、自分は美味しいとこだけでワルぶっていた。
 だから今回の活躍はぼくにとって初めての出来事、考えるより先に行動してなんとかやり切ってここまで逃げて来られたんだけど、
やり遂げた快感と恐怖感と後々の不安感で興奮がなかなかおさまらなかった。

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